フリーランス保護法について
弁護士 溝口 史子
2026年5月執筆
フリーランスとは、雇人がいない自営業主や一人社長で、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を言います。例えば、個人として委託を受ける配達・配送業者や、システム開発業者、デザイナー等がこれに当たります。
フリーランスという働き方は、多様な働き方の1つとして現代社会に定着していますが、業務委託者に対し力関係(情報量や交渉力)で劣ることが多く、契約条件が曖昧なまま契約を締結させられたり、ハラスメントを受けたりする等、不利な立場になりやすい状況にありました。
このような状況からフリーランスを守り、フリーランスとして安心して働ける環境を作るために、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス保護法)が制定され、令和6年11月1日から施行されています。
フリーランス保護法の保護対象となる「特定受託事業者」は、業務委託の相手方である事業者であって、①個人の場合は従業員を使用しないもの、②法人の場合は、1人の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの(いわゆる一人会社)を指します。
フリーランス保護法では、こうした特定受託事業者に対して業務を委託する際、業務委託事業者に対し、業務委託の内容(業務委託事業者の名称、業務委託をした日、給付または提供を受ける役務の内容、給付を受領しまたは役務の提供を受ける期日・場所等、給付内容について検査を行う場合検査完了期日、報酬の額および支払期日、現金以外の方法で支払う場合の明示事項等)を明示することを義務付けました。なお、この明示は書面やメール等で行う必要があり、口頭では足りません。
さらに、業務委託事業者のうち、①個人の場合は従業員を使用するもの、②法人の場合は2人以上の役員があり、または従業員を使用するもの(つまり、特定受託事業者より規模が大きな委託事業者)を「特定業務委託事業者」と定義付け、追加して以下の遵守事項を定めました。
まず、特定業務委託事業者が特定受託事業者に1か月以上の業務を委託する場合、不当に、①受領拒否、②報酬の減額、③返品、④買いたたき、⑤購入・利用の強制、⑥経済上の利益の提供の要請、⑤給付内容の変更およびやり直しの要請を行うことが禁止行為として明示されました。また、特定業務委託事業者が6か月以上の業務を委託する場合には、特定受託事業者に対して妊娠、出産もしくは育児又は介護に対する配慮を行うことが求められるほか、委託契約の中途解約や更新拒絶にあたっては契約終了日の30日前までに特定受託事業者に通知を行うことが義務付けられました。
そのほか、特定業務委託事業者に対しては、報酬の支払期日の設定(給付の受領または役務の提供の完了した日から起算して最長で60日以内のできる限り短い期間内)や期日内の支払、募集情報の的確な表示、ハラスメント対策に係る体制整備も義務付けられています。
このように、フリーランス保護法により、業務委託者と受託者(フリーランス)が対等な事業者であり、受託者の弱い立場につけこむことが許されないことが明確になりました。なお、契約の形式や名称上は業務委託(フリーランス)に該当するように見えても、働き方によっては「労働者」に該当し、労働基準法が適用される可能性があります。働き方の実態に合った法適用を求める必要があります。
フリーランス保護法違反の被害にあった場合には、公正取引委員会、中小企業庁、都道府県労働局に相談窓口が設けられています。具体的な解決を希望される場合は、弁護士にご相談ください。