不当労働行為 その⑵
弁護士 横光 幸雄
2026年9月執筆
支配介入
1. はじめに
今回は労働組合法七条三号で禁じられている支配介入について説明します。
使用者は労働組合の結成もしくは労働組合の運営につき、「支配し」もしくはこれに「介入」してはならないとされています。
支配とは、労働組合の結成もしくは運営につき使用者がその主導的地位を占めること、介入とは、右の程度には至らないが、使用者が組合の結成、運営につき種々の影響力を行使することです。しかし実際は程度の差ですので、一括して「支配介入」として処理していいと思います。
2. 支配介入の態様
- 組合結成に対する支配介入
組合規則の作成や組合役員の人事などについて、使用者があらかじめの準備したり、組合結成大会が使用者の指導や影響下になされるのが典型的事例ですが、それだけでなく、結成準備中の中心人物を解雇・配転したり、個々の従業員に対し組合加入の意思を問い資したり、結成大会に参加するのを監視するなど、組合結成を妨害することも支配介入に該当します。 - 組合運営に対する支配介入
使用者やその関係者が組合の運営方針の決定に関与したり、組合大会に出席して組合運営方針を非難したり、組合幹部に解雇を予告して威嚇するなどです。これ以外にも組合員を買収する、組合員や役員の行動をスパイさせ組合の弱体化を図るなども支配介入に該当します。 - 反組合的言動
使用者の反組合的言動について、アメリカのタフト・ハートレー法では「使用者の見解の表明が、報復または暴力の威嚇、もしくは利益の約束を含まない限り、言動の自由の範囲内である」として容認されているとのことです。
しかし、我が国では、労働組合の大部分が企業内組合で、一般的に使用者の影響を受けやすい状況を考慮する必要があり、前述のアメリカの場合よりも広く組合員や労働者の団結に影響を与える言動には支配介入の成立を認め、特に労働組合の組織問題や内部運営などの組合が本来的に自主的に決定すべき領域にかかわる使用者の干渉的言論は、当然に不当労働行為と考えるべきです。
また不当労働行為等の主体である使用者の概念についても、会社の役員はもとより部課長などの使用者の利益代表者たる管理職にある者は、反組合的言論を禁じられていると考えられます。 - 経費援助
使用者が組合運営に必要な経費上の援助をすることは、組合の自主性を失わせます(労組法二条但書)。使用者が組合運営のための費用として現金を支給したり、組合機関紙に広告を出し、広告料の支援によって組合経費の大部分がまかなわれるような場合などは違法です。
しかし、就業時間中に労使の協議や団体交渉が行われる場合に、その時間の賃金を差し引かないことや、福利厚生資金の寄付、最小限の広さの事務所の供与などは例外として許されています(労組法七条三号但書)。 それ以外にもチェックオフ、時間内の組合活動の容認などは、労働組合の存立に必要な便宜供与として組合の独立性自主性を害するものではないので経費援助には該当しません。 - 組合分裂工作
争議中などに、使用者が組合員やその家族に働きかけて、組合からの脱退を勧奨し、別組合を結成させることも明確に支配介入です。
今回はとりあえずこの程度にしておきます。